「さよなら」そう言って笑って

だから僕はお笑い感想家として生きていく

「エル・カブキ」さん ネタ見て笑って

エル・カブキさんはマセキ芸能社所属のエル上田さんとデロリアン林さんからなるコンビだ。

エル・カブキさんのネタの議題としてよく用いられるのが、芸能などの時事ネタであり、これは若手漫才師の中でもエル・カブキさんくらいしかやっていない領域である。

そして、その芸風はNHK新人演芸大賞マイナビラフターナイトなどで高く評価されている。また、他事務所でありながらも南海キャンディーズ山里亮太さんにも愛されているコンビであり、ラジオにも呼ばれるほどである。

山里亮太さんといえば、M-1に「ツッコミによる笑い」の概念を持ち込んだ人物である。エル・カブキさんのネタもエル上田さんによる「誰が分かるんだよ!」から始まる長いツッコミによって、デロリアン林さんのボケから笑いの爆発を起こしている。ここも山里亮太さんが評価する部分であるかもしれない。

また、デロリアン林さんは、北海道出身で調理師学校に通っていたため、料理のスキルがあるというが、それでTVに出るのにためらいがあると自身の配信するラジオで語っていた。それは、調理師と断絶するためだという。今のTV、例えば「うちのガヤ」などでは、芸人が特技を披露し、そこから知名度が高くなるケースもあるのに、それをしないという点である意味「かぶき者」なのかもしれない。

最後になるが、エル・カブキさんは自身の配信するYouTubeラジオがあり、それも登録人数800人を超えるなど今、注目すべきコンテンツを持っている。そんなラジオを見ないのははっきり言って損だ。見てみるのをオススメする。そして見てみたらツイッターで#エルラジと書いて、呟いてみるといいかもしれない。

「ゼウスちかお」さん ネタ見て笑って

今回は、ピン芸人のゼウスちかおさんを紹介する。ゼウスちかおさんは、いわゆる地下芸人であり、現在はフリーで活躍されている。

私がゼウスちかおさんを知ったのは、YouTubeである。その時、印象に残ったワンフレーズがある。それは、「私は!ソニーを!3回クビになっております!」だ。このフレーズは今でも面白く感じる。お笑いに詳しくなっている人なら分かるだろう。このワンフレーズの凄さが。「誰でも入れる」と言われるソニーを3回もクビになるというのはお笑いファンの心をくすぐる名言である。

ゼウスちかおさんの漫談は、自分の身の回りに起きたエピソードを語るものだが、それらはどれもこれと同じレベルで「はぁっ!?」と言いたくなるような衝撃的なものであり、その度にお笑いファンの心を揺さぶる。

「芸人は、自分のプライベートを切り売りする仕事」と前に聞いた記憶がある。しかし、ゼウスちかおさんは、「切り売り」するレベルでは無い。全体を受け入れ、味わうのが1番面白いと感じるのだ。

正直、これ以上ゼウスちかおさんについて書こうと思うと、ゼウスちかおさんのネタ部分を書かなければならない。それは、私のブログで書いてしまうよりも実際にネタを見てもらった方がふさわしいのではないかと思うので控えさせてもらいたい。

しかし、これだけは言う。「面白い」と。

 

「アンコウズ」さん ネタ見て笑って

アンコウズさんは、現在フリーで活躍されているアビコタツヤさんと辻本まるおさんからなるコンビだ。

アンコウズさんのネタを私は1回しか拝見したことがない。しかし、私は「オススメ芸人は?」と友人に尋ねられると、アンコウズさんを勧める。

その理由は明白だ。ネタがとてつもなく面白く、インパクトがあるからだ。実際にネタを見てもらう(ダブルブッキングのぶるぶるサーカスで見てもらうと分かる)のだが、かなり強いアビコさんのエピソードを提供し、ややスローながらも連発しているのが凄い点だ。

そして、このエピソードを提供しているのは、辻本さんである点に注目したい。正直、このネタはアビコさんの漫談としても成立するほど面白い。しかし、敢えてそれを辻本さんが語ることによって、客観的にアビコさんを見ることができると考えた。また、ネタ中にアビコさんが瞬きをしないと言うのも、アビコさんの人に合っている。基本的に、人間は無意識のうちに瞬きをするのだが、それをしない(もしくはできないのかもしれないが、それは私は知らない。)と言う点でストイックな一面も感じられる。そして、そのストイックさがアンコウズさんならではのスタイルを確立しているのだろうなと感じた。

「トキヨアキイ」さん ネタ見て笑って

トキヨアキイさんは、ケイダッシュ所属のよしさん、ササさんからなるコンビだ。

トキヨアキイさんの漫才は「ウケメン」では「エモ白い」と紹介されていた。私が「エモい」で思い出すのは、「ワラチャン」という大会に出ていた「扇」というコンビだ。彼らも「エモい」ネタをやっていた。

ただ彼らはエモさを作り出すので手一杯だった感がある。中学生の放課後の会話のような感じがあり、イマイチハマってはいなかった。

しかし、トキヨアキイさんは違う。ササさんの圧倒的なエモさが見ている人とよしさんを包み込んでいるのだ。

そんなコンビは強い。お客さんはよしさんと同じ感情で漫才を楽しむことができる。要は、「見やすい」のだ。また、上番組ではネタ中に音楽を使用していた。「漫才であるのに」という概念を「エモさ」は綺麗さっぱりと消し去ってしまったのだ。それは、非常に面白い。また、音楽を使うことでトキヨアキイさんの表現したい「エモ白い」世界がより広がるのにもつながる。そして、そんな「エモ白い」世界に必要なのは、圧倒的な表現力である。高いエモさを持っていたとしても伝わらなければ意味がない。しかし、そんな心配は不要だった。「バブ」を議題にする漫才では、消えていく様子をユーモラスかつ儚く演じていた。このコンビはユニットコントでも輝けるなと感じた瞬間だった。

芸人は時として、新しい言葉を生み出す。例えば、「最初はグー」という言葉は志村けんさんが生み出したとされる。それと同じように「エモ白い」が日本全国に広まり、それがトキヨアキイさんから生まれたとされるように切に願い、このブログを締める。

 

「3時のヒロイン」さん ネタ見て笑って

3時のヒロインさんはよしもと所属、ゆめっちさん、かなでさん、福田麻貴さんからなる女流トリオだ。

ネタは、漫才もコントも高い水準でこなすトリオであり、これは女性トリオの中では3時のヒロインさんだけ、男性トリオを加えてもそう滅多にいない。

そんな3時のヒロインさんの漫才、コント両方の特徴として言えるのは「トルコライス」である。

トルコライスとは、長崎県「中心としたご当地グルメであり、一皿に多種のおかずが盛りつけられた洋風料理のことを指し、中身として一般的なのは、ピラフ、ナポリタン、豚カツなのだそうだ。もう、お気づきだろう、「インパクト」が凄いのだ。

例えば、かなでさんの動きのキレは素晴らしく、今、話題のしゅんしゅんクリニックPさんのPVにも出るほどだ。また、ゆめっちさんの歌唱力はネタに広がりを加える。この2人は3時のヒロインさんのネタの主軸を担い、なくてはならない存在である。

が、しかし、ここで考えて欲しいのは「そんなインパクトだけでは胸焼けを起こすのではないの!?」ということだ。つまり「どこを見ればいいのか分からない」という状態になるのではないのかということだ。

これをそうならないようにしているのが福田さんだ。福田さんは敢えて自分を存在感の薄いツッコミにし、2人の良さを引き出すのに専念している。ネタを書いているのは福田さんであるので、自分を前にしたネタも書くことはできるがそれをせずにトリオとしていい形にしている。それが凄い点だと感じた。そして、それは福田さん自身分かっているからこそ、「ウケメン」にて、「ユニットコントの台本が…」と言っていたのかなと思った。

トルコライスは長崎の人に愛された名物料理である。そんなトルコライスと同じように3時のヒロインさんもTVの世界で愛されてほしい。

「リンダカラー」さん ネタ見て笑って

リンダカラーさんはたいこーさんとデンさんからなるナベプロ所属のコンビだ。

まず芸風として、暑いツッコミのたいこーさんと自分の世界観を持っているデンさんの対比は見やすい。また、ネタも「宇宙人」や「ライオンのツッコミ」などを議題にしているため、小さい子でも分かりやすい。

ただ、これだけだとコンビ歴2年足らずのコンビがレギュラーになれるはずがない、何か理由があるのだ。

それを私は「仲の良さ」と考える。それは、よく「TVで見る芸人さんは仲がいいとか」とやっているが、その比ではない気がしている。まず、デンさんはたいこーさんに対して、めちゃくちゃなことを言う。が、それをたいこーさんはその持ち前の熱量で受け入れる。漫才を機械的に考えるなら「人と人がマイクの前で話す」ことであり、片方が変なことを言うのなら、もうその人の話を受け入れるはずがないだろう。しかし、リンダカラーさんは違う。くどいが、2人でその世界観を作り上げているのだ。そこが、核となる「個性」として、レギュラーへの切符を掴んだと考えた。

また、たいこーさんのツイッターに「幼なじみコンビ」とあったのも興味深い。リンダカラーさんは2度、「ウケメン」でネタをやっていたのだが、両方とも自己紹介か何かで「幼なじみコンビ」と言っていた覚えがない。(勘違いならば申し訳ないが…)「幼なじみ」と言っているなら分かる。「ずっと一緒にやってきて、こいつの言うこと分かるからやってやろう」感が出てくる。しかし、敢えてそれを言わなくてもその「感」を出す、世界観で笑ってもらえるという点で「個性」に自信があるのだ。

その「個性」を武器に仲良く、さらに芸を磨いてもらいたい。

「マカロン」さん ネタ見て笑って

カロンさんはSMA所属、舟久保匠さん、前嶋大翔さんからなるコンビだ。

カロンと聞くと「甘い」という印象を受ける。確かに、ネタは恋愛ものを中心とした「甘い」漫才だ。しかし、ネタの質はそんな「甘ったるいもの」ではない。

カロンさんのネタはテンポの良い会話劇が多く、随所にボケが散りばめられている。よくM-1では「手数が大事」と言われることが多く、実際、NONSTYLEさんやアンタッチャブルさんなどが当てはまり、それを踏まえてマカロンさんを見ると、「手数」系である。「手数」系には平均点以上のボケが常に求められるが、マカロンさんはそれをしっかりクリアできている。

また、現在の漫才でよく言われる「漫才=人(人)」にも対応できている。そう思う根拠は、マカロン特有のつかみ、「人生で〜」やオタ前のセリフ「クゥー!」とハモる部分からだ。

そして、「恋愛ネタ」だけ(私の勉強不足で違うネタをやっているのかもしれないが)というのも評価が高い。今現在の中小企業などでも、他の企業と似たようなことをやっていると潰れてしまう。それの回避のためには、人のやらないことをやる「ニッチ」や人よりも得意なことで勝負することが求められる。これは、芸人の供給の多い時代において、これらのうちのどちらかでも持っていなければ、埋もれてしまうことと同じことだ。しかし、マカロンさんにはその心配はいらない。恋愛ネタをやる芸人は多いが、それが主に漫才で、かつ高いクオリティーのものがやれるのは十分な強みだ。

ネタは甘いが、戦略はしっかり甘くない期待の本格派である。